「初めいるような返事だったんですよ。梢さんなんて名前そうざらにあるはずじゃないんですもの。無駄だと思ってドライブしてみません?」
「そうね。」
 街は電燈の世界になっていた。二人は何か引込みのつかないような気持で、酔興にもさらに料金を約束してタキシイを駆った。いつになく小夜子は興奮していたが、庸三もこの機会にそんな家も見ておきたかった。
「どうせ飯でも食うつもりなら……。」
「そうよ。」と小夜子は少し間をおいてから、
「でも私あすこ駄目なのよ。」
「ああ、そう。」
「私麹町の屋敷にいる時分、病気で一月の余もあすこにいたことがあるんですの。そこへある人が来て寝そべっているところへ、突然やって来たものなんですの。女中がそのことをしらせに、ばたばたとやって来たもんですから、彼は大狼狽で、洋服を引っ抱えたまま庭へ飛び降りたのはよかったけれど、肝腎の帽子が床の間に置き忘れてあるじゃありませんか。」
千歳船橋 歯医者



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