店の前にすっくと立っていた。炎の向こうで、その姿が揺れる。
 「これ、もらいました」
 カシャリという小さな音が、僕を振り向かせた。振り向きざまにオサムの姿が見え、その向こうにいつの間にか〈町さらい〉の老人が立っていた。この人はいつも僕たちの後ろに、いつの間にか立っている。〈町さらい〉の老人がのぞいているクロームでメッキされた小さなカメラのボディが、燃える〈緑橋〉の照り返しで赤黒く光った。白と黒の世界に取り囲まれていた僕が久しぶりに見た色は、鉄骨の燃える色がクロームのカメラ・ボディに写った赤黒い反射だった。
 「『その翌朝』とでもしておきますか。一九六四年の、その翌朝ですね。何とものんびりとした風情がいいじゃありませんか」
 「あれじゃ焼け死んじゃうぜ!」
 オサムは燃えさかる〈緑橋〉から目を離さなかった。弓子は片足を路面に下ろして自転車にまたがったたまま、凍りついたようにその場を動かない。確かにこのままでは弓子は…僕はしかし別のことに気が付いた。
 「オサム! 『あいつ』はどこに消えたんだ!」
 帰ってきたオサムの返事は、目の前で起こっていることに比べると、どこかのんびりとして聞こえた。
 「『あいつ』? お前、まだそんな寝ぼけたこと言ってるのかよ。それどころじゃないぜ、今はもう」
 弓子は動かなかった。僕には見えないどこか一点にその視線をはりつけたまま、自転車と一緒に凍りついている。
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