とにかく下宿を引き払って来た笹村は、また旧の四畳半へ机を据えることになった。近所にはその一ト夏のあいだに、人が大分殖えていた。正一と前後して産れたような子供を抱いて、晩方門に立っている内儀さんの姿も、ちらほら笹村の目についた。お銀がよくつれて来て、菓子をくれたり御飯を食べさしたりして懐けていた四ツばかりの可愛い男の子も、しばらく見ぬまに大分大きくなっていた。その子は近所のある有福な棟梁の家の実の姉弟なかに産れたのだという話であった。
「自分に子をもってみると、世間の子供が目について来るから不思議ですね。」
 お銀は格子に掴まって、窓へ上ったり下りたりしているその子供の姿をじっと眺めていた。その姿はどこか影が薄いようにも思えた。
「今のうちは何にも知らないで、こうやって遊んでいるけれど、大きくなったら、これでもいろいろのことを考えるでしょうよ。」
 笹村も陰気なその家のことを考えないわけに行かなかった。
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