素早く背後に隠してしまった。しかし呉一郎はチットモ気付かぬらしく、なおも流るる汗を拭い上げ拭い上げして眼をしばたたきつつ、穴の中から見上げた。その顔を穴のふちから見下して正木博士はニッコリした。
「今掘り出したのは何だね」
 呉一郎は気まり悪る気に顔を赤くしつつ、左手の食指を博士の鼻の先に突き出して見せた。博士が鼻眼鏡を近づけてみると、その指の頭には、女の髪の毛が一本グルグルと捲きつけてあった。
 正木博士は、それが何を意味するかを知っているらしく、真面目な顔でうなずいたが、今度はうしろ手に隠していた汚れたハンカチの包みを解いて、中味を左の掌に取ると、呉一郎の鼻の先に突き出した。その掌の中には、二個月前にこの解放治療場に這入ると直ぐに拾ったラムネの玉と、きょう掘り出した魚の骨との外に、赤いゴム櫛の破片と、小指ほどの硝子管の折れたのが光っていた。
「これは、お前が土の中から掘り出したのだろう」
天神 矯正歯科



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