お島が楽みにして世話をしていた植木畠や花圃の床に、霜が段々滋くなって、吹曝しの一軒家の軒や羽目板に、或時は寒い山颪が、凄じく木葉を吹きつける冬が町を見舞う頃になると、商売の方がすっかり閑になって来た壮太郎は、また市の方へ出て行って、遊人仲間の群へ入って、勝負事に頭を浸している日が多かった。
 持って行った植木の或者は、土が適わぬところから、お島が如何に丹精しても、買手のつかぬうちに、立枯になるようなものが多かったが、草花の方も美事に見込がはずれて、種子が思ったほどに捌けぬばかりでなく、花圃に蒔かれたものも発芽や発育が充分でなかった。壮太郎はそれに気を腐らして、この一冬をどうしてお島と二人で、この町に立籠ろうかと思いわずろうた。
 山にはもう雪が来ていた。鉱山の方へ搬ばれてゆく、味噌や醤油などを荷造した荷馬が、町に幾頭となく立駢んで、時雨のふる中を、尾をたれて白い息を吹いているような朝が幾日となく続いた。小春日和の日などには、お島がよく出て見た松並木の往還にある木挽小舎の男達の姿も、いつか見えなくなって、そこから小川を一つ隔てた田圃なかにある遊廓の白いペンキ塗の二階や三階の建物を取捲いていた林の木葉も、すっかり落尽くしてしまった。
 それでも浜屋の奥座敷だけには、裏町にある芸者屋から、時々裾をからげて出てゆく箱屋や芸者の姿が見られて、どこからともなく飲みに来る客が絶えなかった。
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