生まれて始めて芽をふき始めた。そして解剖刀のような日ごろの批判力は鉛のように鈍ってしまった。葉子の母が暴力では及ばないのを悟って、すかしつなだめつ、良人までを道具につかったり、木部の尊信する牧師を方便にしたりして、あらん限りの知力をしぼった懐柔策も、なんのかいもなく、冷静な思慮深い作戦計画を根気よく続ければ続けるほど、葉子は木部を後ろにかばいながら、健気にもか弱い女の手一つで戦った。そして木部の全身全霊を爪の先想いの果てまで自分のものにしなければ、死んでも死ねない様子が見えたので、母もとうとう我を折った。そして五か月の恐ろしい試練の後に、両親の立ち会わない小さな結婚の式が、秋のある午後、木部の下宿の一間で執り行なわれた。そして母に対する勝利の分捕り品として、木部は葉子一人のものとなった。
 木部はすぐ葉山に小さな隠れ家のような家を見つけ出して、二人はむつまじくそこに移り住む事になった。
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