女中の迎いを受けて浮橋がさきへ来た。女房と女中が階下へ立ったあとで、浮橋は花魁がこの年の暮れに手詰まりの訳を話した。それも五十両ばかりあればいいのだが、さてその工面が付かないのは情けないと言った。次郎左衛門はたったそれだけでいいのかと笑った。これは花魁へいつもの土産だといって、二百両の金包みを出した。浮橋にも十五両やった。
「これで花魁も浮かみ上がるでおざんしょう」と、浮橋は自分も生き返ったように喜んでいた。
「今ここへ来る途中で、栄之丞さんに丁度逢ったよ」と、次郎左衛門は杯を浮橋にさしながら言った。
 どこで逢ったと訊き返したので、雷門まえで逢ったというと、浮橋は黙って少し考えているらしかった。この頃こっちへ来るかと訊くと、浮橋はちっとも寄り付かないと答えた。八橋と喧嘩でもしたのかと訊くと、そんな訳でもないらしいとのことであった。
 いい加減な嘘をついているのだと治六は思っていた。しかしそれは客に対する新造の駈け引きでもなんでもなかった。じっさい栄之丞はこの冬の初め頃から八橋のところへ顔を見せないのであった。
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