二つになる男の子を、お銀のところへ連れ込んで来て、不幸な自分の身のうえを話しながら、子供の顔を眺めて泣いていた。その子供の父親は、芝の方のある大きな地主の道楽子息であった。そして今は親から勘当されて、入獄していた。子供は女がお茶屋に奉公している時に出来たのであった。お銀も貰い泣きをしながら、子供に涎掛けを出してくれなどした。
「あの子は育たないかも知れませんよ。阿母さんは心配して乳が上っているんですもの。脚など、自家の子くらいしけアありませんよ。」
「死ねばあの女の体も浮ぶんだろうが……。」と、そういう笹村は、まだ子供を育てるような心持になりきっていなかったが、それでも子供の病気をした時には、心を惹きつけられずにはいられなかった。
 夕方お銀に抱かれて、表を見せられていた子供は、不意にどーッと乳を吐き出して、泣くことも出来ずに苦しんだ。
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