惜しいもんだね」
 川西は、独り店頭にいた小僧を、京橋の方へ自転車で用達に出してから、註文先の話をしてお島に言った。彼はもう四十四五の年頃で、仕入ものや請負もので、店を大きくして来たのであったが、お島たちが入って来てから、上物の註文がぼつぼつ入るようになっていた。
 川西は晩酌をやった後で、酒くさい息をふいていた。工場では皆な夕方から遊びに出て行って、誰もいなかった。
「そんな腕を持っていながら、名古屋くんだりまで苦労をしに行くなんて、余程可笑いよ」
 川西は、傍に附絡っているお秀をも、湯へ出してやってから、時々口にすることをその時もお島に言出した。
「ですから私も熟々厭になって了ったんです。あの時疾に別れる筈だったんです。でもやっぱりそうも行かないもんですからね」
「小野田さんと二人で、ここでついた得意でも持って出て、早晩独立になるつもりで居るんだろうけれど、あの腕じゃまず難しいね」
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