今までにない健かな呼吸遣いをして、じきに眠ってしまった。
「さあ、私坊やの寝ているまに、ちょっとお湯へ行きたいんですがね。」
 お銀はここへ来てから時を見計らっては来てくれるお冬に、時々髪だけは結ってもらっていたが、一度もお湯に入る隙を見出すことができなかった。
 そこらを取り片着けてから、お銀が出て行ったあとの病室に、笹村はぽつねんと壁にもたれて子供の寝顔を番していた。そして疲れた頭が沈澱して来ると、そこにいろいろ始末をしなければならぬ退院後の仕事が思い浮んで来た。「退院するときあまり変な見装もして出られませんしね。」と言ってお銀の気にしていたことも考えられた。
 お銀はつやつやと紅味をもった顔を撫でながら、じきに帰って来た。退院後の家が、子供に珍らしかったと同じに、暗いところに馴れたお銀や笹村の目にも新しく映った。ふっくらした軟かい着物を着せられて、茶の間の真中に据えられた子供は、外の世界の強い刺戟に痛みを覚えるような力のない目を庭へ見据えていた。顔もまだ曇っていた。
 もう退院してもよかろうかといって尋ねた笹村に、「そう。もう少し。」と言って、院長は子供の腹工合を撫でて見ながら、
「予定より少し長くなったが、今度はもう大丈夫――随分苦しかったな。」と笑いながら引きあげた。
 それから二、三日も経った。後はしばらく通うことにしてとにかく夫婦は病院を引き払うことにした。その日は朝から、二、三日降り続いていた天気があがりかけて、細い雨が降っているかと思うと、埃のたまった窓の硝子に黄色い日がさして来たりした。
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