序に今一つ御紹介致しますると、あのボール紙の王冠を頭に戴いて、行きつ戻りつしている年増女で御座います。これはあの衣紋のクリコミ加減でもお解りになります通り、或る町家の娘で、芸妓に売られておった者で御座いますが、なかなかの手取りと見えて、間もなく或る若い銀行家に落籍される事になりました。ところがその銀行家の両親が昔気質の頑固者揃いで「身分違い」という理由の下に、彼女を正妻に迎える事を許しませんでしたので、彼女はそればかりを無念がりました結果、或る宴会の席上で、初めてのお客に向って「アンタが何ナ……妾に盃指すなんて生意気バイ」と啖呵を切りますと、イキナリその盃を相手にタタキ付けて、三味線を踏み折ってしまった……そのまま当病室へ連れて来られたという痛快なローマンスの持ち主で御座います。ヴォラーレ



このサイトは無料ホームページ作成.comで作成されています